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2017.06.22 (Thu)

本棚:『竹と樹のマンガ文化論』ほか

F橋市の西図書館がリニューアルしたので、
近くに用事があるとき寄るようにしている。
建物だけでなく蔵書もかなり新しくなったので、
読みたい本がたくさん見つかって嬉しい嬉しい。

『はじめての短歌 いい短歌の正体とは。』:穂村弘(14.04)
穂村さん本職の短歌の解説本。
改悪例を並べて示すことで、短歌の視線の持ちようがわかる。
誰にでもすぐにわかるように伝える「生き延びる」ための文章との違い。
さすが日常生活の中の暗黙のルールで右往左往する穂村さんだなーと納得。
限られた文字数の中で選んだ言葉が広げるイメージ、世界、記憶。
ここでは触れてないけれど、
逆に、てらいすぎ、やりすぎ、ひねりすぎ、なパターンもあると思う。
そのへんの線引きもまた微妙で難しそう。

『竹と樹のマンガ文化論』:内田樹・竹宮恵子(14.12)
竹宮さんが大学の学長になって学校で漫画を教えているとは知りませんでした。
しゃべりすぎる内田さんとの対談は刺激がたっぷり。
内田さんによる「ボーイズラブ漫画は少女漫画家のアンチアメリカ(仮)説」は
頭でっかちというか、きれいにつじつま合わせてる分だけ鼻息荒過ぎというか。
でも竹宮さんの話で、実際はわりと単純な理由だったのが読んでておかしかった。
以前読んだ内田さんの著作の中に
「いかに労力(勉強)をかけず資格を取るかが、教育におけるコスパの良いこと」な
ミもフタもないことが書いてあったけど、
同じように大学にお金を出して漫画を教わりに学生は
あまり能動的に動いていくということがないみたいだ。
それでもこの学校の、
複数の教授たちから多角的に指導を受けられるシステムはとても面白い。
マンガはもともとオープンソースなもの、という指摘に目からウロコ。
オリジナリティやら、誰が始めたとか、そんなつまらなことで世界を固めてしまうより
イイものはイイで、みんなが取り入れて盛り上げていくという形はとても健全。
漫画は基本的にはすべて一人で作るものなので、
なにからなにまでやらなければいけない、というのも
改めて言われると凄いことなんだよね。
そして漫画は読む人がいなければ意味のないただの紙で、
そのために読者をひきつけるあらゆることを考えて作っていく。
発行部数が文学書などとは比較にならない世界にいた人の言葉は
すごく説得力がある。
竹宮さんが教えることを引き受けたのは、
積み上げてきて前提となっているはずの漫画の基礎が、
受け継がれず形が崩れたまま続いていくことへの危機感や
同じく漫画を作る編集者もまた、サラリーマンとなって経済的な結果ばかりを追い
長い目で育てていくという視点が薄くなってきているということからだそうだ。
最後の章で、内田さんが言っていた「ストックフレーズの乱れ打ち」はコワイ話だった。
気の利いた文章を書く子がさらさらと書き上げた文章ほど、致命的に定型的。
マニアな雑誌の投稿欄、オタクのTwitterみたいに、
誰が書いても同じニオイなんだろうなあ。

『続々 自閉っ子、こういう風にできてます!自立のための環境づくり』
:岩永竜一郎・ニキリンコ・藤家寛子
ニキさんの本を読んでいると、
人の身体も感覚も程度問題なのだと思う。
多数決で決まっている世の中でどう上手く対応していくか、
それは障害のあるなしにかかわらず誰しも関係のあること。
誰もが自分の身体のことしかわからない。
感じ方見え方が他の人と同じである確証はない。
不便であることすら、自分の体験で比較をしなければ見えてこない。
感覚を分かりやすい比喩で言葉にすることのできるニキさんによって
専門家も気付いていなかった様々なヒントが見えてくる。
固有受容覚がちゃんと働かないと、自分という意識を持ちにくくなる、なんて
言われてみればそうか!と納得。
身体と頭とココロは繋がっていて、
その人の繋がり具合でそれぞれの個性が出来上がっている。
相手の反応が表面から見えにくい分、
自分の理屈・感覚を他者に押し付けてしまうことも多い。
自閉症スペクトラムの人だけでなく、
多かれ少なかれ日常の不具合は誰しも持っているもの。
想像力と気付きって難しいけど必要なこと。

『ダイオウイカは知らないでしょう』:西加奈子・せきしろ(15.02)
ananで連載されていた、短歌に挑戦する企画、なのだと。
手に取ってぱらっと見たときの期待感が高すぎて、
それほど爆笑な感じでもなかったのは
まあ自分のせいですけど。
今まで読んだ穂村さんの著作の中で選ばれる短歌って、
素人目にもやはり研ぎ澄まされてるんだなあと思う。
二人(とゲスト)の作る短歌を見ていて、
文字をまず合わせることって、意外に大事なんだと思ったなー。
同じ人の歌を続けて読んでいると、
ちゃんとその人にしか書けないものがあるのが見えて面白かった。

『片づけの解剖図巻 心地よい住まいをつくりだす仕組み』:鈴木信弘(13.12)
家を作るときのヒントが詰まった本。
夢みたいなイメージだけで終わらず、
実際に住んでみた場合のシミュレーションを踏まえた提案。
私は家を作る予定はまったくないけど、
土間・下屋のある家は使いやすそうだなー。
とりあえずテーブルの上に置きっぱなしになってるものを、
自分の座る場所の隣に移動する、というのはやってみました(笑)
シンプルで味わいのあるイラストとコメントがツボ。

『たましいのふたりごと』:川上未映子・穂村弘(15.12)
川上未映子さんの本は読んだことがないけれど、
コダワリ方とか潔癖な雰囲気とか思い込み方とか読んでいると
こういう人だから小説を書いたりできるんだろうなと思う。
本のために1日で語り下ろしたような感じなので
一つ一つにもう少し分量があってもいいような気がしながら読んだ。
「牛丼を食べるたびにおいしすぎて不安になる」という穂村さんの感性は
やはり鋭すぎてレベルが違う。

『黄昏』:南伸坊・糸井重里(16.04)
文庫で読んだ。初出は2009年とか。
あまり二人が一緒にいる印象がなかったけれど
年が一つ違いだったり仕事をいろいろやってきたりしているんだな。
二人の面白いと思うところ、しつこくいじるところに微妙な違いがある。
伸坊さんがあちこちで「本人」になってるところがオカシイ。
天狗の活躍っぷりと奥様のプロ意識に笑う。
おじさん同士のバカな話って好きだ。

『まちの本屋 知を編み、血を継ぎ、地を耕す』:田口幹人(15.11)
盛岡にある、さわや書店フェザン店の店長による本。
中堅規模の本屋にできること、あるべき姿。
経営との両立を図りながら、
地域と繋がり本屋を超えて場を作っていく醍醐味。
本屋の棚から発されるメッセージ、個性がある。
本の付録のロボットを代わりに組み立ててあげるエピソードは
しみじみと感動的だった。
本は決め打ちで読めば済むものでも、似たような本ばかり読めばいいものではなく
思いがけない発見があるから面白いもの。
本屋や図書館に紛れ込んで物色する楽しさこそ、
なににも代えがたいと思う。

『11歳からの正しく怖がるインターネット 大人もネットで失敗しなくなる本』
:小木曽健(17.02)
ネットはあくまでも道具。
ネットが原因で良くないことが引き起こされるのではなく、
昔からある良くないことが、ネットを使って行われただけ。
自分でもスマホのことがよく分からないのに
子供に与えて不安になるってなんだろうか。
ネットという特別な枠の中で話をするのでなく
日常の中に置き換えて、
相手とどうコミュニケーションを取るか、その時ネットをどう使うか、
という視点から話が進むのでとても分かりやすい。
若い人からのメールの文章がものすごく短い、というのは
(そこが本題ではないけど)けっこう驚いた。

『鳥肌が』:穂村弘(16.07)
またまた穂村弘です。もったいないけど読んでしまった。
この本、いつものエッセイよりも、少し踏み込んだ感じがする。
おなじみの日常の中の暗黙のルールに右往左往する話のレベルが
常識と思うラインを少し逸脱しそうな、きわの部分に焦点を合わせてる。
読みながらゾクッとするような、
普通と見えていつの間にか違う世界に踏み込んでいる恐怖。
「そっくりさん」の話はかなり怖かったー。
挿絵の、気持ちがさわさわするようなタッチ。
つるつるして冷たさのある紙質も、内容を補完するようで。
1本と見せかけて、細い糸がたばねられていた栞も
読んでる途中に気付いてドキッとした。
「私の人生を四文字で表すならびくびくだ」の記述に爆笑する。
タイトルとしては、連載時の「鳥肌と涙目」の方が好きかも。
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2017.04.13 (Thu)

本棚:『金色機械』ほか

書いてため込んでいたものを今さらアップ。
読んでいたころはまだまだ寒かった。
充実のラインナップ。

『隈研吾:レクチャー/ダイアローグ』:隈研吾(07.09)
またまた隈さんの本。
建築家・学者・作家などとの対談集。
専門家同士で内容はかなり骨のあるものだけど、
わからない部分ははしょりつつ読んだ。(建築用語とか)
建築の規模、クライアントの規模、建てる場所、使う技術、使う建材、コンセプトや思想、
複雑に絡み合いながら、相手(人や物体)と対話しながら、作り上げていくもの。
ひとつの建物というのにとどまらず、
周りの景観、街のデザインという大きなものや、
家族の住み方、在り方にまで影響するのが建築。
文章で読むだけでもワクワクするものを、
実際の大きさで、中にいて感じるのは、またいっそうワクワクしたものになるだろう。
隈さんの建築の本を読むと、あちこち訪ねてみたくなる。
逆に、知らずいいなあと思った建物が、
実は隈研吾の手がけたものだった、ということがとても多かったりする。
以前上野千鶴子さんの建築と家族をテーマにした本、
『家族を容れるハコ家族を超えるハコ』を読んで
すごく面白かった記憶があるのだけど、
その対談相手のひとりが隈さんだったんだ、と今さらながら気付く。
やはり面白い相手というのは、名前云々ではなく、
内容で、言葉で、面白いとちゃんと感じるんだな。
この本の中の対談は、かなり上野千鶴子のアタマの中にあるもので
ぐいぐい進んで行くような感じだったけど。


『養老孟司の人生論』:養老孟司(16.09)
新しい本と思ったが、以前出ていたものの復刊らしい。
最初の方は、「死」のとらえ方など、
すでに読んだ感のある内容だったけど、
学生運動にまつわる話が出てきたあたりから、
いろいろ刺激を受けつつ読んだ。
「変わらないもの」「変わるもの」の言葉の意味合いが、
文章の中で入れ替わっていくのに注意しつつ読み進む。
変わっていくのは自分。時勢によって変わっていく社会。
その中で変わらないものを追求するのが学問。
学問は役に立つ、結果がすぐ出る、個人の業績に繋がる、
ようなものではない。
問題の根本を考え反省しないでいるから、
戦時中と同じことが学生紛争の中で亡霊のようによみがえる。
「原理主義」な頭の人が「この非常時に」と言い出す恐ろしさ。
この先も、同じことが別の局面で起こらないとは言えない。
対象を選ぶと間違うが、方法を選べば応用が効く。
頭で考えて意味がないと決めると何も動かなくなる。
動いてみないと覚えない、わからないことがたくんさんあるのに。


『ネットのバカ』:中川淳一郎(13.07)
『ウエブはバカと暇人のもの』から数年して、
ツールが新しくなっても、
やっていることは変わらず、
むしろバカが表面に出てくる機会が格段に増えた。
どんな新しいものが出てきても、たどる過程は変わらない。
結局テレビは今でも大きな影響力があるし、
テレビに出ている人の影響力も大きい。
記名と無記名で見せる顔の違い。
顔がわかる場所で自分の趣味や嗜好をさらすときの
「みっともない」の自制と「イケてる自分」の演出。
関係が周りに見える場所でのややこしく遠回しなやりとり。
使える時間はみんな等しく24時間しかなく
情報やお楽しみがあふれたところで、かけられる時間は限られている。
結局、自分の気持ちのいいものにしか、触れているヒマはない。
それでも、まわりには多様な意見や視点があって、
自分が見ているのは一面でしかないと自覚しておくことだけは重要だと思う。

『用もないのに』:奥田英朗(12.01)
初出は04~09の雑誌に掲載されたもの。
奥田さんのエッセイは安定のユルさ。
ちゃんとした文章で、面白いものを分かりやすく読ませる。
面白おかしい書き方でごまかさなくても笑える文章は書ける。
プロの作家の文章をちゃんと読まないと、脳みそがふやけるな。
雨のフジロック体験記は未知の世界&オヤジ初参加で何倍にも面白かった。

『金色機械』:恒川光太郎(13.10)
残り少なくなった恒川光太郎さんの本を大事に読んでる。
4センチ近い厚さのハードカバーを、通勤に持ち歩いた。
短い時間でも引き込まれる面白さ。
短編と違い、不思議な要素は少なくても、
時代背景の中にない要素が入ることで、
違う空気になる。
ゆるく繋がる人とエピソード。
つじつまを回収していくようなつまらなさはなく、
起こるべくして起こったことと、
人間のもつ怖さから思いつき始まることが
うまく絡みあっていく。
恒川光太郎さんの本の怖さは、
人間の残酷さ、気持ち悪さの描写にもある。
善悪は自分が属する場所によって変わるという言葉が
それぞれが置かれた状況を受け入れて進むしかないことを
端的に表している。
進む方向の先々で、人と出会うときに、
一緒になったり衝突したりと物事が動く。
恒川さんの世界は本当に面白いな。

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2017.02.16 (Thu)

本棚:『圏外編集者』ほか

去年読んでいたもの。
とりあえず書いておいてアップしてない、というのがたまってます。
前回ゆるめの本を続けて読んでたので
今回はぐっと濃い経験値の詰まった本が並びました。

『圏外編集者』:都築響一(15.12)
編集者の方が、よくぞ粘って、聞き書きの本にしてくれました!という1冊。
何かを発信する、ものを作る、ってどういうことか、
気付きと刺激に満ちた本。
「好き」のエネルギーが、何をおいても一番の原動力なのだと分かる。
都築さんはいつも人が素通りするような面白いものを
取り上げている、と思っていたが、
実は「誰にでも関係するもの」「行こうと思えば行ける場所」を
取材しているのだと気付く。
たしかに、ゴージャスでオシャレで高価なものは、
ほとんどの人には現実味がなく無関係なもので、
それが記事の中心になっている雑誌ばかりであるほうがおかしい。
音楽でも美術でも文学でも観光地でもライフスタイルでも
専門部署の人間ならば、
もっと早く、効率よく、アクセスできるはずなのに、
やらないから、自分が一からやらざるを得ない。
手間と時間とお金がかかっても伝えたいものがあるからやる。
写真をてがけるのも、人に任せる時間とお金を惜しんだからで、
その結果、他の人とは重心の違う写真が撮れる。
「作品」ではなく「報道」だから、
紙面のデザイン性よりも、一つでも多くの情報を伝えたい、というのも
当たり前のことなのに、気付かずにいたこと。
都築さんが仕事を始めたころよりも、環境はまったく変わって、
プロとアマを分けていた差がどんどんとなくなっている。
技術を底上げする機材も安価で高性能になったし、
発表の場所もいくらでもあるし、どこにいてもできる。
ネットでデータにすれば、物理的なスペースも不要。
雑誌が死んでいくのも仕方がない。
この本の最初は、
自分の好きなこと、興味のあることをいかに実現するかな内容で
後半は、周りの目を気にせずに自分の好きなことを突き詰めている人を探して
取材していくことの醍醐味について語られる。
いずれにしても「好き」の力がなければ、面白いものは生まれない。
検索して見つかるようなものに、新しさはない。
都築さんのメルマガ、ものすごく面白そうだけど、
週1回の配信で、いくらスクロールしても終わりが見えないようなボリューム感、
しかも内容的にも濃ゆいに違いないものを、
定期購読できる自信がないわー。

『ウェブでメシを食うということ』:中川淳一郎(16.06)
『ウェブはバカと暇人のもの』の著者の本。
ネットが広まっていく過程を自分の体験をもとにして語っていて分かりやすい。
最後は固有名詞が多すぎて、
知っている人なら、つながりの醍醐味を感じられるのかもしれない。
ネットで有名になった人たちと言うのは多数いると思うが
ひとつの事例を知ると、
今の膨大で、とらえられない規模の世界にも
始まりがあって理由があったんだと分かる。
ネットニュースをはじめとして、
更新の頻度と記事の多さを思うと
どうでもいい内容、どうかと思う参照先、
反応として挙げられる事例の薄っぺらさ、
文章の拙さ、
どれも致し方ないことなんだろうが、
いつのまにかそういう単純で分かりやすく本当にそうなのか検証も甘いようなネタと
瞬発力だけの無責任な反応に埋もれて、
世間の雰囲気が作られてってしまうのかなと不安になる。
今もこの先も、
誰がどこまで網羅できるのか、
広がりすぎた世界を整理し説明してくれる人が
求められるように思う。
他にもたくさん著作があるようなので、つまんで読んでみるつもり。

『マンガ熱 マンガ家の現場ではなにが起こっているのか』:斎藤宣彦(16.07)
ボリュームと情熱に満ちた本。
Eテレでやっている「漫勉」が好きで見てるのだけど、
あれを見たあとだと、文章だけというのは分が悪い気がする。
自分が知っている島本和彦や藤田和日郎であれば、
熱い言葉の数々がストレートに入ってくるのだけど、
あまりなじみのない人、知らない人になると、
しかも作品を絡めてとなると、正直あまり分からなくなる。
やはり筆の動くさま、絵が出来上がっていく過程ほど
漫画を知るのに最適なものはないんだなあと実感。
でもこれだけ濃い中身のインタビューはそうないと思う。
島本和彦さんの「ギャグ特許」の話、
藤田和日郎さんの「ヒーローは間に合わなければならない」、
こういう一言が読めただけでモト取った感じ。

『毎日が一日だ』:いしいしんじ(16.03)
毎日新聞に連載されていたエッセイをまとめたもの。
『京都ごはん日記』に書かれていたことが、
読みやすい文章で、説明も加えられて、
いしいしんじを知らない人にも分かりやすくなった感じ。
息子に対する愛情を、作家の客観性と文章力で書くと
誰のココロにも繋がっていく深みが出る。
男性作家が子供について書く文章が私はすごく好きだなー。
この作家の子供だから、で
他の子供には体験しようのないものもたくさんあるけれど
日常の中で子供が見せる新鮮な反応や言葉は、
子育ての醍醐味なんだろうと思う。
目の前の小さなことに怒ってばかりいるお母さんや、
仕事に追われるばかりで時間のないお父さんに、
こういう本を読む暇もないのかもしれないし
読んでも味わうほどの余裕もないのかもしれない。
でも後から振り返って、うつくしい思い出として読むよりは
今読んで、今の時間の大切さを感じてほしいなあ、
などと部外者は呑気に思ったりする。

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2017.01.11 (Wed)

本棚:『主夫になろうよ!』ほか

頭を使いすぎたので、反動でゆるい本ばかり読んでいた。
去年の秋ごろに読んでたもの、だったかなあ。
書いてそのままになってました。

『長くなるのでまたにする』:宮沢 章夫(15.03)
宮沢さんの本をちゃんと読むのは初めて。
Eテレの「ニッポン戦後サブカルチャー史」を見てて、
こういう人なのかと分かって読んでみた。
文章の長さがまちまちなところがいい。
長く考察するよりも、
短く、尻切れな感じで終わる文章の方が面白い。
どのネタも、ユルさが半端なく、
文体がちょうどいい硬さとやわらかさ。
淡々としてるのが可笑しさを誘う。
こういう抑え目の文章で、どうでもいい話を書く人はとても少ない気がする。

『「ブス論」で読む源氏物語』:大塚ひかり(00..01)
再読。『源氏物語の身体測定』の文庫版。
読むものが手元になくなると、源氏物を読みたくなる。
末摘花ってデブじゃなかったのか。

『お家賃ですけど』:能町みね子(10.07)
男性から女性になる間のエッセイ。
淡々としていて読みやすいなと思ったら、
mixiの日記を再編したものらしい。
メディアに注目される以前の神楽坂の中にある
時間が止まったようなアパートでのくらしの話。

『主夫になろうよ!』:佐川光晴(15.02)
家庭での仕事は、どちらかが負うのではなく、
両方ができたほうがいい。
掃除、洗濯、料理は、
家族の健康、家族のシアワセにダイレクトに繋がる仕事。
やるほどに頭も使い、感性も鋭くなり、技術も上がる。
「自分が作ったもので、子供が大きくなる」
これほどのやりがいはない。
男性側の視線で主婦(主夫)の仕事を見直されると、
ないがしろにされている、当たり前だと思われている家での仕事の多くが
それこそ自分にしかできない、意味のある仕事なのだと分かる。
「作家という職業だからできるんでしょ」と関係ないものと思わず
自分だったらどう対応するか、と考えるところからはじまる。
なんにしてもゴハンひとつも作れない人に、
仕事がちゃんとできるとか思わないんだけどなー。

『日本の居酒屋文化 赤提灯の魅力を探る』:マイク・モラスキー(14.03)
いわゆる外人風筆名なのかと思ったら、ほんとのアメリカの方だった。
文章、内容からはぜんぜんわからない、
実体験に基づくディープな飲み屋の紹介と分析。
なかなか入るには勇気のいる場所ばかりだけど、
興味深い飲み屋がたくさん。
自分で感性を磨いていくこと、見る目を鍛えることの面白さ。
「メディアやネットで居酒屋を語るときに料理の話ばかり」という指摘に、確かに。
場を楽しむには経験が必要だなー。

『今日も嫌がらせ弁当 反抗期ムスメに向けたキャラ弁ママの逆襲』:ttkk(kaori)(15.02)
頭が下がります・・・。
インパクトだけではなくちゃんとおいしそう。

『第2図書係補佐』:又吉直樹(11.11)
ブックガイドでありつつ、自身のエッセイでもある。
ふたつが同時に楽しめるお得な1冊。
以前読んだ『カキフライが無いなら来なかった』『まさかジープで来るとは』の中に
又吉さんのエッセイも入っていて、それもとても面白かったんだよね。
私はあまり小説を読まないので、このガイドは視野を広げるのにいいかも。
新旧関係なく、いろいろ入っているのが面白い。

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2016.10.15 (Sat)

本棚:『いつまでも若いと思うなよ』ほか

初夏のあたりから読んでいてたもの。
刺激のある本の数々。
死・身体・能力・引継ぎ、な話に、頭の中が活性化。
なんか養老孟司フェアな様相。
来生さんにも読んでほしいような本がたくさん。(たぶん読まないだろうが)

『いつまでも若いと思うなよ』:橋本治(15.10)
橋本さんは現代の啓蒙家で、
至ってまっとうなことを、
少し人が思いつかなかったところから
きちんと言葉で追っていくので
なかなか読みにくい、ところはあるかもしれない。
このヒトは浮ついたことを言ってるのではなく、
自分の経験にのっとって、身体で知って頭につなげているというのが
この本を読むとすっごくわかる。
こんな大変な経験、普通の人では乗りきれない。
貧乏(しかも飛び込んで行った)、
万人に一人の難病、膨大な仕事量、半端ない頭の良さ。
そういう人が、老いについて考え、発見の日々を新鮮に驚いている。
死は結局、生の側からしか考えられない。
橋本さんの新しい本が、まだ出ていることに感謝。

『衣にちにち』:群ようこ(15.06)
日々の着るものに関するエッセイ。
ある日突然、いつも着ていたものが似合わなくなる、というのがコワイ。

『よはひ』:いしいしんじ(16.01)
小説っぽい小説を読むのははじめてかも。
恒川光太郎的な雰囲気もあって面白かった。
いしいさんの本は、ひとつの文章で、
ふいにどっと涙が出てくるようなところがある。
大きな事件が起こるわけでもない話に
あっという間に引き込まれる。
目の前に、乗るはずの電車が来ているのにも気付かなかった。
一編が短いので読みやすい。
最後にゆるゆると話が集まってくるのも面白かった。
「小学4年の慎二」が強烈に印象に残る。

『街場の共同体論』:内田樹
久しぶりに内田さんの本を読みました。
社会で起こっている複雑なことを、
誰かがかみ砕いて解説してくれるととても助かります。
当然、その「誰か」が問題で、
内田さんなら大丈夫だろうと私は思うので読みます。
今の社会の状態が、
戦後豊かになることを望んで進んだ結果であるとの文章に
深く納得しつつも、恐ろしさとやりきれなさを感じて
いつもなら「そうか!」とすっきりするところが
「そうだよね」と、げんなりするという方にすすみ、
読みながら気分がふさいでしまいました。
「教育」を「経済」の視点でとらえると、
何も勉強(努力)しないで資格を得ることがいちばんトクした人になる、というのが
みもふたもなさ過ぎて嫌になる。
少しでも他者を思って動くこと、そういう人の割合が少しでも増えること、
自分から、動かしていく以外に策はないんだろうな。
次世代を育てる、自分がもらったものを次に渡すことの大切さ。
「人に迷惑をかけない」という言葉の裏にある思考にぞっとする。
他者は、めぐりあわせでそうならなかった自分の姿と思えば
考え方も変わっていく。

『庭は手入れをするもんだ 養老孟司の幸福論』:養老孟司(12.12)
先の内田さんの本と、内容がリンクしていてびっくりする。
同じような話を続けて読むことでより腑に落ちていく。
「こうすれば こうなる」と考えて、
分かった気になって動かないことの意味のなさ。
「自分」なんて、自分のものではないという考え方。
日本の自然が他国にはないほど多様で豊かなこと。
それはその国の人の考え方にも通ずること。
効率や便利や楽なことを優先して人間の力が落ちていること。
小さな範囲だけを切り取って考えることでは意味がなく、
物事はさまざまに繋がり連動していること。
以前読んだ『武術と医術 人を活かすメソッド』の
「総合医療」の考えにも繋がる話。
考えるよりもやってみること。
考えすぎて簡単な答えにも気づかないほど、能力は下がっている。

『からだとはなす、ことばとおどる』:石田千(16.03)
石田千さんの本は、読んでいると落ち着く。
言葉の静かさ、ゆっくりさ。
生活する時間の丁寧さ。
写真も含めて、昭和なかおりのする本。

『日本人はどう死ぬべきか?』:養老孟司×隈研吾(14.12)
続けて養老さんの本を読む。
二人の対談本から、隈研吾さんのことを知ったのだった。
「死」をテーマとしながら、話は違う方へ脱線していく。
日本という自然災害の多い場所に住んでいる以上、
家はずっと住み続けるものというよりも、
変化して流れてやり直せるものであるほうが自然な気がする。
「死」はつまるところ、2人称(近しい人)の死が一番の問題で
自分は死んだらおしまいで自分にはわからないのだから、
今ちゃんと楽しまないでどうすんの、今やることやらないでどうするの、
という考えが底にあるので、読んでいると気持ちが上がっていく。

『老人の壁』:養老孟司・南伸坊(16.03)
こちらも、老人・死というものをテーマとして与えられながら
中身は「どう楽しく生きていくか」ということが中心。
・人間はだませても自然はだませない。
 いい加減な仕事には相応の結果が起こる。
(これ読んだ後に、豊洲の盛土問題が出てきてうなった)
・余命は短く言っておいた方が、
 その数字より先に死なれる可能性が低くなるので医者にとって都合がイイ。
・分かったことが嬉しいのではなく、分かって自分が変わることが楽しい。
・良いと思っていることにも裏表がある。
 効きすぎる薬をもって、よく効くからと増やすのか、よく効いたからと減らすのか。
 絶対なんてものはなく、距離感と、ほどよいところで受け入れることの大事さ。
・車みたいな、70キロの人間ひとり動かすのにトンのものが必要か?
・ただ見ているだけでは分からない、
 絵を描くことで細部を観察し、概念化ができるようになる。
・趣味や夢中になることを持つと考えることが楽しくなり、
 儲けなんて出なくても人の役に立たなくても、そこに自分という作品が残る。
まさに、分かって自分が変わるような話が次々と。
軽く読み進められるけれど、たくさんの豊かな話が詰まっている。

『女を生きる覚悟』:三砂ちづる(14.07)
以前読んだ『不機嫌な夫婦』と内容的にはかぶるところが多いけれど
繰り返し読んでも大事なことは残してあるという感じ。
ここでも、大事な話をする前に、
各方面への断り書きをくどいほど書かねば話が進まないという、
今の世の中の難しさが見える。
身体のもつ力を呼び覚ますことの重要さ。
日常当たり前に使っているもの(水や電気など)がある日無くなった時に、
身体の力が発揮できる。
便利に慣れて、いろいろなことを忘れた身体がかかえる問題を
感じること・想像すること・経験してきたことから考え直すことがとても大事。
三砂さんの本を読んでいると、
赤ちゃんや子供には、
幸せを感じて嬉しいと素直に表現できるような環境と体感を
与えてほしいと心から思う。
大人の都合で無理のある生活をして、身体という基本の環境をないがしろにすること、
自分が便利だからラクだから、
子供たちの気持ちが本当にそうなのかは分からないから、と
小さな子たちが、我慢して受け入れなければいけない状態に置いてしまうこと、
読んでいると切なくて悲しくなってくる。

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09:29  |  蛸足図書室  |  トラックバック(0)  |  コメント(4)
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