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2013.02.06 (Wed)

本棚:『まんが学特講 目からウロコの戦後まんが史』ほか

久々に図書館で集めてきた本は、私の嗜好のど真ん中。
どれもお勧め、なんだけどあまり読まれないんだろうなー。

『その未来はどうなの?』:橋本治(12.08)
あとがきを読んで驚いた。
橋本さん、面倒な病気で長く患っているらしい。
地に足のついた並じゃない知性とまっとうさをもった、
日本の知的財産と言ってもイイ人が
「気力が続かなくて物が書けない」というのは尋常じゃない。
その中でぽつぽつと書きすすめたこの本は、分量としては少ないが、
橋本治らしく、たくさんの示唆と、物を考え直すきっかけに溢れている。
「美人は権利になった」
「日本は結論ありきでスタートし、どうするの?ではなくどうなるの?で考える」
「民主主義という究極の政治形態が行き渡り、
何事も簡単に決まらないのは当然の流れ。
力でねじ伏せるこれまでの長い歴史の前提は崩れ、
強いリーダー不在→待望論という形で、独裁者は今は心の中に現れる。
必要なのは自分の為に議論を誘導するディベートの技術ではなく、
みんなのためを考える、といういたってまっとうな道筋」
TPPに関する章を読みながら、安部が再選された現状にうんざりしてしまった。

『評伝ナンシー関 心に一人のナンシーを』:横田増生(12.06)
ナンシー関が亡くなって10年が経つんだな。
今なお、ナンシーがいればと思っている人は多くいると思う。
この本はナンシー関を知る人への地道な取材で成り立っていて
彼女が無名の頃からどのように全国区のコラムニストになったのかを
丁寧に追っている。
彼女と直接の面識もなく、雑誌で読んではいても単行本を買ったことはない、
という著者の距離感が、むしろ内容にバイアスがかからなくて良かったと思う。
彼女の全てのコラムがハズレが無かったとは思わないが、
彼女の視点、するどい観察眼と文章力、絶妙な間合いの取り方は
自分の中にも常に持っておきたいもの。
久しぶりに、続きを急いて読みたくなる本だった。

『まんが学特講 目からウロコの戦後まんが史』:みなもと太郎・大塚英志(10.07)
まさに目からウロコ。
手塚治・24年組・トキワ荘だけでは
漫画の歴史を語ったことにはならないというのがよく分かる。
↑の3つも、この本で出てくるさまざまな漫画家や漫画も
私はほとんど読んでないと思うが、
劇画の存在が背景にあればこそ、今の流れがあるんだと分かる。
さいとう・たかをに関しては「ゴルゴ13」しか思い浮かばないが、
知らなかった話がいろいろ出てきて面白かった。
「いいムード」は説明されなきゃわかんない!
内面の表現を模索すると少女マンガに行くしかなくなるとか。

実は私は小さいころから絵を描いてばかりいて、
学生時代はずっと学漫の人でした。
しかも高校時代の漫研がとても硬派だったので、
漫画を描くことに関しては未だに結構ウルサイです。
ペンタッチに関する二人の認識の違いはとても面白かった。
「今の漫画家は絵描き」というのは、私が漫画描いてた時から思ってた。
絵なんて描いてれば誰でも上手くなる。
でもネームのセンスは別物でそっちが作れる方がずっと凄い、
と私は思ってるけど今はそうでもないのか。
一部のしっかりした骨太な作品を除けば、
きっと山ほどの「絵が上手いだけで中身の薄い漫画」が溢れてるんだろうな。
カードゲームのカッコイイ1枚絵が描ければオッケーなんて、
コミケのシロートじゃあるまいし。
「今の漫画家はネームよりもコマの作画に時間を割き、
コマの連なりとして考えるのではなく、1コマの中での整合性にこだわる」
「16枚分の原作と思って漫画家に渡したら70ページで切ってきた」とか、
もう最近ぜんぜん漫画読んでないから驚いてしまう。
絵に関するコダワリだけが細分化して、
読ませる技術が言及されなくなってるのか。
イヤだなと思ったのは「リアル」の捉え方。
現実にある銘柄のビールの缶を、アルミの質感までトーンを使って描く、
というのが今の「リアル」だなんて、随分セセコマシイことで。
考証の必要なSFを書く作家がいなくなり、
雰囲気的な共通認識と資料がたくさんあるファンタジーがはやる、というのもなんだかなあ。
結局読む側にも、想像力がなくなって、
全てを破綻なく説明されていなければ読めなくなっているんだろう。
みなもと氏が言うように、四角い紙に1000と書いて千円で通じさせるのが、
漫画のリアルでいいはずなのにね。
ネットで山盛りの情報が探せて、「正確」=「正解」を追求しても、窮屈になるばかりだ。

著者の二人と編集者、場を提供したまんが図書館の館長の4つの世代が関わることで
まんがを語る時に、当時の雰囲気や状況、最初に何を読んだか、
同じ雑誌の中に何が一緒に掲載されていたか、
などなど全てを考え合わせないと、実情は見えてこない、というのが分かる。
まんがを読むという個人的な体験だけでつじつまを合わせると
見失うものがたくさんあるんだと思った。
同じ漫画を読んでいても、
発表された当時に読んでいるか、後からさかのぼって読んでいるか、
順番が違うだけで作家や作品に対する自分の中の評価も当然変わる。
それを踏まえて語らないと、
不当に低い評価を受ける作家がたくさんいるんだと改めて思う。
みなもと氏のイラダチがよく分かり、
繊細な感覚のズレを、資料で裏付けながらちゃんと検証していくことの重要性を感じた。
今や雑誌も作家も作品も発表の場も、比べ物にならないくらい増えた。
見えないものが多すぎて今の状況を俯瞰するのは難しい。
でもほんの少し前までの当たり前の漫画の状況を、きちんと捉えなおすことはとても大事。
大塚英志がそういうことに気がついて、これからの活動や著作にいい影響を与えるだろうな。
なんだか楽しみだ。

「漫画を描く」という話になると、かなり熱くなってしまうのもんさんです。

『身体で考える。不安な時代を乗り切る知恵』:内田樹・成瀬雅春(11.06)
内田さんの本を読んでいて気持がいいのは、
この人が身体の声を聞けるからだ。
社会や文化のことを語っても、頭上を素通りするのではなく、
身体の内を通ってくる言葉には手触りがある。
合気道6段とヨーガ行者の対談は、全編刺激に満ちている。

「ろくでもない未来でも自分の予測が当たったことの方が、
知的に卓越していることが証明できる。
悪いことを予測すると、それが当たるように無意識に
悪い方への選択肢を選んでしまう」というのに納得。
だからマイナス思考の人はうっとおしいんだよな。
やはり日々楽しいことを考えて「そんなことできない」なんて自分に制限を付けないことが、
毎日楽しく過ごす秘訣だと思う。
好奇心を持つこと、やりたいことはやること、どんな状況も楽しむこと、
身体の発するセンサーに敏感になること。
危機的状況のための備えは、まず心がけ。
せいぜい長く生きても100年。
ネガティブなことをいじくりまわして不満を言ってるなんてもったいない。
成瀬氏の言葉でとても印象的だったのは
「楽しい走馬灯を見るために毎日楽しいことをする」
もう超共感。
「死ぬ瞬間に、自分の人生を走馬灯のように見るのであれば、
つまらなない人生を歩んだ人は、つまらない走馬灯しか見ることができない。
死の瞬間に、自分の生涯がつまらなかったと思うことほど残念なことはない」

私も「これがあれば、辛い時にも大丈夫」という幸せな瞬間をいくつも持っている。
だから多分、なんかあっても頑張れる。
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14:40  |  蛸足図書室  |  トラックバック(0)  |  コメント(2)

Comment

>悪いことを予測すると、それが当たるように無意識に悪い方への選択肢を選んでしまう

あ~そうか、そうだよなぁと私も激しく同感しました。と同時に〝あの方”のお顔が浮かんだけれど、あの方のネガティブ思考は↑とは根っこが違うような気もするし。

私はエネルギーに変わるような幸せな瞬間はあんまり持ってないけれど、その代わり〝辛さに気がつかない”という特殊能力(?)がありますw世間ではそれを〝鈍感”というのでしょうが。
私が見る走馬燈はきっと淡々と穏やかなんだろうなぁと思います。でもそれが自分に合った生き方だと、のもんさん・れいさんの記事や皆さんのコメント・いろいろな本を読んだりしているうちに、この歳になってやっと気が付きました。

内田樹という人にはちょっと興味があります。私はエッセイは苦手で小説ばかり読んでいますけど、内田さんの本は読んでみたいと思います。

今日はなんだか私事ばかりですみません<m(__)m>
カノン |  2013.02.07(木) 21:58 | URL |  【編集】

カノンさん

ネガティブ思考だけど、あの方のはまたちょっと違うんだよね。
死ぬことは怖いけれど、
最後に自分しか見れない走馬灯が見れるんだったらちょっとワクワクもしてきます。

この本読んでたら、余計なこと考えてるのがどんだけもったいないかと思います。
まちょっと、非現実的なモノが苦手な人は、話について行けないかもしれないけど。

内田さんの本、いいですよ。
内容は多岐にわたるし、全てが面白い!とも言えませんが、
とにかく山ほど著作が出てますから、自分にも読めそうなのがあるかも。
図書館でちょっと気になったやつ手に取ってみてください。
のもん |  2013.02.09(土) 00:17 | URL |  【編集】

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