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2015.05.12 (Tue)

本棚:『善き書店員』ほか

3月に図書館の長い整理期間があったので、
どさどさ借りてきた。
読了したのは以下の本。

『善き書店員』:木村俊介(13.11)
書店で働く普通の人たちへのロングインタビュー。
大きな事件でもなく、大きな失敗と成功の記録でもなく、
日々仕事をする中にある喜びや工夫やしんどさなどが
普通の語りの中から見えてくる。
このボリュームだからこそあらわれる興味深い話の数々。
普通の人、とはいっても書店員としての評価のある方々なのだろうけど。
複数の人が語ることで、書店という仕事場をより深くのぞかせてもらった感じ。
このシリーズでほかの職業の方の話も聞いてみたい。

『「本が売れない」というけれど』:永江朗(14.11)
↑の本とも、若干リンクするような話。
一言で本が売れないと言っても、その要因は様々。
これからどういう形で本や本屋が残っていくのか。
なくならないけれど、なくならないなりにどう変わっていくべきか、
ヒントはたくさんある。
まあ私が本を買わないのは、お金とスペースがないからと、
興味のある範囲が雑多なせいだな。

『生きる悪知恵 正しくないけど役に立つ60のヒント』:西原理恵子(12.07)
きれいごとだけでは生きていけない。
ちゃんと逃げてちゃんとかわしていくことも大事。
質問36の質問者に対し、
「目の前で川を流されていっても助けてくれなさそう」
という一言に、ホントそうだよな、と。
条件利害打算損得が先にくる結婚なんてしてもしょうがない。

『無頼化した女たち』:水無田気流(14.02)
09年に出版された本に対談と書下ろしを加えたもの。
09年版の方は、そんなもんかと思いつつ読んだが、
読み進むごとに救いのない矛盾だらけの現実に
気持ちがキリキリしていく感じがした。
一人の女性という問題に収束していては、この流れは止まらない。
働くこと、生活すること、次の世代を作ること、幸せに過ごすこと、
このままでいたら男も女も大人も子供も共倒れしそうだ。

『秋の牢獄』:恒川光太郎(19.10)
3冊目の著作。短編集。
「こういう設定」で始めて、「こういう設定」の短編だから、で
程よいところで完結する話。
他の人が書いたら、もっとやりすぎになって
世界が狭くなってしまうかもしれない。
想像を広げ、リアリティを残し、不思議や謎や疑問もそのまま残す。
さじ加減と、文章の静かで淡々とした感じが絶妙。
どこか明るさとユーモアも含んでいて、
その中にドキリとするような恐ろしい場面が挟まれる。
短い分量ながら、読んでいて自分の中に広がる世界の大きさ深さが半端ない。
この人の本は4冊目になるけど、妙なクセもなく、
するりと体に入っていく文章も心地よい。

『デジタル・ワビサビのすすめ 「大人の文化」を取り戻せ』:たくきよしみつ(14.04)
技術やツールがどんどん進歩していくからと言って、
それについていくだけがデジタルとの付き合いではない、ということか。
自分がやりたいことのために、自分が使いこなせる相応の技術を用いるだけでも
生活はもっと楽しくなるよと。
でもそのためには、それなりに知識も必要だよ、と。
生まれたときから携帯でネットにつながっている環境がある世代は
友達間でのやり取りが「インターネット」であることを自覚していない、
というのは驚いたし怖い。
この本を読んでしばらくして、ガラケーの生産中止なんてニュースを見ると
使い続けたくてもどうやって対応すればいいのやら、
泣く泣く高くて無駄な機能満載のスマホに変えるしかないのか、
うんざりする思いだ。

『木皿食堂』:木皿泉(13.05)
彼らのドラマを見たことはないが、
NHKのドキュメンタリー番組で二人を知って、
同じタイトルの本を見つけたので読んでみた。
文章がとても読みやすく、気持ちがいい。
神戸新聞連載のエッセイは読んでいてじんわりと幸せな気持ちになる。
創作の現場をのぞくようなインタビュー、対談も興味深い。
愛とパワーと責任感とやさしさが全編に通じている。
一つも見たことのないドラマだけど、何かの機会に見てみたいと思わせる。

『南の子供が夜いくところ』:恒川光太郎(11.02)
一つの世界の中で、時間と場所を越えてつながりあう短編集。
がっつり伏線まみれではなく、
ゆるく関係する距離感が、いつものことだけど本当に気持ちよく読める。
一つ一つは独立した話でもある。
長さもそれぞれに、相応しい長さ。
さわさわと心がざわめくような話や、軽いような不気味な話や、
じっくりと深くまで入り込んでしまう話やら。
「まどろみのティユルさん」「夜の果樹園」が印象深い。
私にはないことですが、去年から(ほぼ)出版された順番で読んでいます。
まだ読んでいない本が、どんどん少なくなっていくのが辛い。
そう思う小説家に出会えたのは幸せなことだ。
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テーマ : 最近読んだ本 - ジャンル : 本・雑誌

09:23  |  蛸足図書室  |  トラックバック(0)  |  コメント(6)

Comment

頭の中

常に読みたい本がある人間ではありましたが、
とある理由(笑)で、まったく読んでおらず、頭の中はもはや空っぽ。
そのうえ、最近文章が下手だなあという自覚もあるため、
ちょうど読書をがっつりしたいと思っていたところでした。

良書の紹介をありがとうございます。
ライブレポも面白いけど、読書レビューも面白いです。さすがです。
普段の文章の面白さは、この読書量に裏付けされているのねと、改めて納得。

何件か地元の図書館でヒットしたので、次回借りにいきます。

音楽しかり、本の趣味もそれぞれで、このようなきっかけで知らない作家さんと出会えることは、とてもうれしいです。

saki |  2015.05.12(火) 13:00 | URL |  【編集】

ありがとうございます。
読んだ端から忘れていくので、
メモ代わりのつもりで始めたんですけどね。
読書レビューもどんどん書く量が(汗)

私の文章は赤瀬川原平と橋本治でできてます。
椎名誠と筒井康隆と花田清輝も下地にあると思います。

最近は小説ほとんど読んでないですねー。
恒川さんは久々にものすごいヒットです。

こんな雑多なブックリストからでも、
ぱらぱらやって、何かしら引っかかるものがあれば嬉しいです。
のもん |  2015.05.14(木) 00:05 | URL |  【編集】

赤瀬川先生

のもんさんありがとうございます。

のもんさんの文章が読みやすく、好きなのは、
男性の作家さんが根底にあるからなのかも、と思いました。
私は女流作家ばっか読んでるからなあ。

そして赤瀬川先生ですか…そのお名前が一番最初に出るのがすごい。

たぶん埋もれていますが、先生の訃報の際の日記にコメントを書いた記憶で…。
あまりにも有名な「芸術原論」とほか数冊、というレベルなのですが、
20年前に読んだ時「(私のように)絵心なくても、美術の内申悪くても、芸術ってこういうのでいいんだよ~」
って、初めて許された気がした一冊で、すごく印象的でした。
高校も愛知県の高校で(しかも難関校)、それもあって親しみを覚えたり。

訃報を聞いたとき、あーショックだ…と思ってしばらく過ごしていたのですが、
その何時間後の運転中に急に思い出し「ああこの世からいなくなってしまったのか!」と思ったら涙が止まらず、
えーそんなに影響受けてたのか、って自分でもびっくりしました。

赤瀬川先生と娘、誕生日同じなんです。
私出産のときちょっと危険で、先生から「もう切りましょう」と言われ、夫にも「産むのは一緒だ」と言われたのに、踏ん切りがつかず…
ふと「今日生まれたらどんな著名人と同じなんだ?」と調べたところ、「赤瀬川原平」の名前を発見し、即、切腹決断しました。
(あと、遠藤周作とか田辺聖子といった名だたる作家さんもいらっしゃったので)。

全然関係なくてすみません。

私も収納の関係と経済的理由でいつも図書館ばかり。
でも私の本棚に一番多く並んでるのは、
原田宗典と片岡義男と林真理子です。ミーハーです。

saki |  2015.05.14(木) 15:08 | URL |  【編集】

おじゃまします

まず 
sakiさん  そんな 生みの苦しみの最中にも情報収集 なんて さすが 情報班!
不謹慎かもですが ニヤリでした。

のもんさん
さっぱり ご縁のないお名前ばかりで(恥)
赤瀬川先生は トマソン のころ お名前だけはきいていましたが・・・その程度
あ サイバラ はイケます。強いですよね。突き抜けた感じ 憧れます。

偶然ですが 
私も前回図書館に行ったとき借りていました。「木皿 泉」!(やっと 引っかかりました)
・・・ いや でもムック本なんですが・・・汗
以前NHKの「スイッチ」という対談番組を見て 借りてみました。  
ドラマ「すいか」は半分くらいみたかな。ノベライズ?シナリオ本?借りて読みました。
「野ブタ」は1~2回見たかな? その程度です。

今、  孔 枝泳(コン ジヨン)  「トガニ  幼き瞳の告発」 読んでいます。
これは 2~3年前に映画を見たので 内容は知っています。
なんともやりきれなく辛い内容です。エロでも残虐映像でもありませんが(いや 残酷か) 
いまどき珍しいR18+です。(最近では かなりなものでもR15+に設定されていますよね)
「翻訳  蓮池 薫」さんだったので 思わず手に取っていました。
ちなみに 横田めぐみ さん
当時 最初は行方不明とあちこちにポスターが貼られ、何年もたった後で 
「拉致」 と言われはじめ まさか と信じられないことでした。
ご両親もお見かけするたびに 歳を取られているのがなんともやりきれなく思います。
もし自分が 中学生のころから 今まで 別の世界で暮らすよう強要されていたら と・・・
想像の及ばないことです。
実際に浜手のあたりに住んでいる方たちは 
「暗くなったら海の方に行ってはいけない」と言われながら育ったようです。
(日本昔話 みたいですが)

関係ないことを 長々 失礼しましたっ!!
じょん |  2015.05.16(土) 22:39 | URL |  【編集】

sakiです

じょんさん。

こんな時に?ってあとになって思いました(笑)。
へその緒巻いてるし、高齢だし、「あまり切らない病院」だったので、私の気持ちひとつで。
何か決め手が欲しかったんですよね。

木皿さんは、そうかーそういう作品の方だったのね。

蓮池さんの名前に私も反応してしまいました。
大学がキリスト教の大学だったのですが、
ある日、急遽学生が集められたときがありました。
大学の近くに「教会」と名前のついた新興宗教団体があって、
そこはお布施を強要するだけだから、絶対に近づかないようにと。

配られた小冊子に、拉致の現状が全部書いてありました。
25年以上も前だから、まだ拉致という言葉が一般的じゃなかったと思います。
もともと怖がりな性格なうえ、まだ18とかでしたから、怖くて怖くて…。
ただ海岸にいただけなのに、どうしてそんなことになるのかが許せなかった。
彼氏に「海にドライブいこ~」と言われても「ムリムリ拉致されてしまう」と本気で怖がってました(こっち太平洋ですけど)。

正義感が強いわけではないと思うのですが、
不公平とか不条理とかに異常に反応してしまいます。
冤罪もそうで…すでに忘れ去られてしまっていますが、名張の毒ぶどう酒事件のことも、ずっと関心を持って見ています。

もっともっと関係ないところに進んですみません(苦笑)。

saki |  2015.05.19(火) 14:01 | URL |  【編集】

sakiさん

たしかに!男性作家ばかりお気に入りだなー。
内容のみならず文体に惹かれるところがありますね。
ほかにも、なだいなだとか大塚英志、
学生~社会人になったころ、
つまりは若いころに読んでいた作家や評論家は、
今でも自分の中でかなり大きな位置を占めてますね。

女性の作家のものもフツーに読みますが、
影響されてると思う人はぱっと思いつかないなあ。
小倉千加子さんは好きですね。フェミの評論家です。
林真理子さんはしばらく読んでいた時期がありました。

娘さんがゲンペさんと同じ誕生日、って
なんか優柔不断が憑依しそうですが、
他に名だたる作家さんがいるなら大丈夫ですね。フフ。

じょんさん

おお、トマソンを耳にしたことがあるとは。
私は何べんも読み返している本です。

木皿泉さん、私も先日のスイッチインタビュー、途中から見ましたよ。
面白かったですねー。
でもドラマは何一つ見たことないんですよ。
本読んでたら興味わいたけど。

そうか、じょんさんは新潟だから、
拉致のニュースもより身近なことなんですよね。
こうやって言われて初めてハッとします。
のもん |  2015.05.21(木) 00:18 | URL |  【編集】

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