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2015.07.15 (Wed)

本棚:『死からの生還』ほか

『聞く力 心をひらく35のヒント』:阿川佐和子(12.01)
大ベストセラーですね。
図書館の整理期間が終わって見に行ったら、この隙間に戻っていたようです。
返せと催促されないうちに読みました。
インタビューは特別な人の仕事ではなく、誰彼の日々の中にあるもの、
な話に、そうか、と膝を打つ。
コミュニケーションをとるというのはインタビューをするのと同じこと。
でも上手に人の話を聞くというのは難しいよね。
とくに女性は、話をする方が好きだし、
聞いてるようで、単に上からかぶせるように話すのは会話といえないし、
そも入る隙間もない人もいるし。
この本、ものすごく読まれているようなので、
ちゃんと話を聞いて、そのうえで話ができる人が増えるといいけどね。
そうでなくても「こういう時はこうしなきゃ」と
気が付く人が増えるだけでもいいけどね。

『赤瀬川原平 現代赤瀬川考』:KAWADE夢ムック(14.10)
亡くなって、やはり業績を振り返るムック本が出ていたようです。
と思ったら、
この本は亡くなる前から企画され、出版されていたものだとか。
企画展といいこの本といい、あまりにも間をおかずのタイミングで、
「ちょうど追悼にしてしまえば」な貧乏性が・・・
と思うのはあまりに赤瀬川脳でしょうか。
おなじみのメンバーによる座談会のほか、
未収録の短編、各ジャンルの関係者による回顧録、分析・解説など。
現代美術の芸術家、裁判になった千円札のこと、櫻画報のころの執筆など、
分析となるとどうしてもそのころの話になってしまい、
いきおい内容もぐぐっと固く難しく読みにくく。
途中でもういいです、な感じに。
その中に、文章も文体も面白い人がいて。
成相肇さん。東京ステーションギャラリーの学芸員の方だとか。
調べてみたら、いろいろと興味深い記事がネットでヒットしました。
→ 美術/でないものへの目線と言葉──「石子順造的世界──美術発・マンガ経由・キッチュ行」展
都築響一さんとの対談。
(でもネットにある分量の多い文章って、落ち着いて読めないんだよねえ)
やっぱり自分のアンテナに引っかかるものというのは繋がっていくものだなーと。
美術館に行くことが日常だった大学のころだら、この展覧会は確実に見に行ってたな。

『死からの生還』:中村うさぎ(14.03)
中村うさぎさんの本をちゃんと読んだことはないような気がする。
文春連載をまとめたものの1冊、なんでしょうが
この本1冊だけで、ぎゅうぎゅうに詰め込まれた興味深いテーマがたくさんあって
読み応えありました。
何しろ、体張ってお金使って大騒ぎしたからこそ出てくる言葉の数々は
説得力と迫力がある。
ただ自分のことを赤裸々に書くだけでなく、
その先の分析、哲学的なものと、客観的な視点からの文章にも
いろいろうなづかされること多々あり。
まあ説教じみた文章もあるし、
女性の中でも「モテ」を志向するタイプにだけ当てはまることなんじゃないのか、とか
疑問のあるところもあるが、
頭の中だけで組み立てられた言葉ではたどり着けない結論は
誰にでも出せるわけではなく、
でも誰にでも届くように書いてくれるのは素晴らしいことだなと思う。
「他者からの承認」を求め続けて、
でもその他者が、突き詰めると「こうありたい自分」だったと分かった時の
抜け出せなさ感が凄い。
欲望があったからこそ人間は社会を作り進歩させてきたんじゃないか、
との認識はもっともだと思うが、
以前読んだ橋本治の著作の中に
「いまや欲望にしか、経済のフロンティアは残っていない」な文章を思い出し、
欲望を相手にしたら、ゴールなんてないんだよな、と思う。
他者からの視線を捨て、自分になる、という終盤の結論は
同時進行で読んでいた「オリーブの罠」とシンクロ。
オリーブ少女的な女は、最初からその地点にいて、
それはそれで苦労があるんだけどね、と思った。
この手の話は、ホント奥が深くて面白い。

『バカになったか、日本人』:橋本治(14.12)
橋本治にこういわれたら、
もう日本はどうにもならないところまで来てしまったのだとうなだれてしまう。
難病を患って、その中でもまだ雑誌やネットに文章を書いていたんですね。
橋本治の文章を読んでいると、
もっとシンプルに考えれば、
どうにかなるであろう問題がたくさんあるのだと感じる。
でも「初めに結論ありきで話し合いに参加するトップにいる頭のいい人」を相手にしても
そこで話し合いなんて成り立たないんだと気付いてげんなりする。
そう思うと、日々のニュースはそんな人の言説に溢れている。
あと、経済でおいしい思いができるという見込みのないところには
誰も進んで手を伸ばそうなんて思わないんだよね、
というみもふたもない現実とか。
橋本治の本て、もっと読まれていいんだけどな。
つか読まないと、ますますどうしようもないところに進んで行くよね。

『ネットで「つながる」ことの耐えられない軽さ』:藤原智美(14.01)
ネット社会になって壊れていく「書きことば」をめぐっての考察。
紙の本がなくなる、とかいう以前に、
日本語自体が無くなる可能性があることにぞっとする。
そういう例は世界に数知れず、日本語そのものがガラパゴスにならないとも限らない。
メディアの形で言葉も変容していく。
そして今はそのスピードが速すぎる。
ネットを介した言葉は、早さを求め、つながることを求め、便利であることを求める。
膨大なデータは、プラットホームを持つ一部の大企業に握られている。
自由でいるようで不自由。
流通する範囲の狭い言葉が失われることもそうだけど、
身体機能が衰えていくという問題もあるし(書かないとか歩かないとか)、
個人の中で考えを煮詰めて熟成させるような、遮断された時間が持てないことも
そのうち大きな問題になるような気がするんだよねー。

『オリーブの罠』:酒井順子(14.11)
私はオリーブを読んだことはないっす。
友達にオリーブ少女はいたが。
こういう社会学系のネタが好きなんです。
先に読んだ中村うさぎさんの本と真逆にいるような女子の本。
うさぎ系女子がもがいて到達した先に、最初からそこをスタートにしている女子もいる。
どちらにも面白さ、良さがあり、苦しさ、袋小路もある。
ただオリーブを読む女の子というのは、
一方でえらいマジメで勤勉なのだなと思った。
ま、昔からオタクでおっさんな私に言われてもね。

『だれかさんの悪夢』:星新一(81.07)
なぜか新入荷で図書館に入っていたので、懐かしくなって読んだ。
意外に、覚えている話もあったなあ。
いわゆる大人が読むような文庫を最初に買ったのが、
星新一の本だと思う。
『未来いそっぷ』を買って、そこからちょこちょこと買って読んでいた。
最初はこんなところから入ったのに、
いつから筒井康隆などという方へ流れていったんだか。

ランダムに選んでいても、自分が読みたいと思う本は、
なんとなくテーマがシンクロしていって面白い。
今回は、言葉を介して人と関わること、
関わる人のそもそものあり方(関わりたいのか、関わらなくても構わないのか)
なんてことを考える本が多かった。

はい、もう3か月近く借りてる本もあるので、返しに行きます。
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09:38  |  蛸足図書室  |  トラックバック(0)  |  コメント(2)

Comment

オリーブ

酒井順子さんの本は「ユーミンの罪」の続編みたいな感じかしらん。読んでみまっす。
オリーブ少女ではなかったけど、なれたらいいなと思っていたのは中二の夏でした。マガジンハウスの雑誌がすべて神のように思えたのは、田舎に住んでたからかなあ。
4月に「GINZA」だっけか、「別冊olive」が付録にあるってんで話題になり、本屋では早々に売り切れ、amazonさん経由で頼みました。
が、イマイチどころか今100でした。残念。
saki |  2015.07.15(水) 10:45 | URL |  【編集】

「ユーミンの罪」は読んでないですが、
タイトルだけ見ると、似たような匂いがしますね。
当時のマガジンハウスのことについても触れているので、
おもしろいかもしれません。
付録の「別冊olieve」って、すごい商法だなー。
のもん |  2015.07.21(火) 22:43 | URL |  【編集】

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