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2017.06.22 (Thu)

本棚:『竹と樹のマンガ文化論』ほか

F橋市の西図書館がリニューアルしたので、
近くに用事があるとき寄るようにしている。
建物だけでなく蔵書もかなり新しくなったので、
読みたい本がたくさん見つかって嬉しい嬉しい。

『はじめての短歌 いい短歌の正体とは。』:穂村弘(14.04)
穂村さん本職の短歌の解説本。
改悪例を並べて示すことで、短歌の視線の持ちようがわかる。
誰にでもすぐにわかるように伝える「生き延びる」ための文章との違い。
さすが日常生活の中の暗黙のルールで右往左往する穂村さんだなーと納得。
限られた文字数の中で選んだ言葉が広げるイメージ、世界、記憶。
ここでは触れてないけれど、
逆に、てらいすぎ、やりすぎ、ひねりすぎ、なパターンもあると思う。
そのへんの線引きもまた微妙で難しそう。

『竹と樹のマンガ文化論』:内田樹・竹宮恵子(14.12)
竹宮さんが大学の学長になって学校で漫画を教えているとは知りませんでした。
しゃべりすぎる内田さんとの対談は刺激がたっぷり。
内田さんによる「ボーイズラブ漫画は少女漫画家のアンチアメリカ(仮)説」は
頭でっかちというか、きれいにつじつま合わせてる分だけ鼻息荒過ぎというか。
でも竹宮さんの話で、実際はわりと単純な理由だったのが読んでておかしかった。
以前読んだ内田さんの著作の中に
「いかに労力(勉強)をかけず資格を取るかが、教育におけるコスパの良いこと」な
ミもフタもないことが書いてあったけど、
同じように大学にお金を出して漫画を教わりに学生は
あまり能動的に動いていくということがないみたいだ。
それでもこの学校の、
複数の教授たちから多角的に指導を受けられるシステムはとても面白い。
マンガはもともとオープンソースなもの、という指摘に目からウロコ。
オリジナリティやら、誰が始めたとか、そんなつまらなことで世界を固めてしまうより
イイものはイイで、みんなが取り入れて盛り上げていくという形はとても健全。
漫画は基本的にはすべて一人で作るものなので、
なにからなにまでやらなければいけない、というのも
改めて言われると凄いことなんだよね。
そして漫画は読む人がいなければ意味のないただの紙で、
そのために読者をひきつけるあらゆることを考えて作っていく。
発行部数が文学書などとは比較にならない世界にいた人の言葉は
すごく説得力がある。
竹宮さんが教えることを引き受けたのは、
積み上げてきて前提となっているはずの漫画の基礎が、
受け継がれず形が崩れたまま続いていくことへの危機感や
同じく漫画を作る編集者もまた、サラリーマンとなって経済的な結果ばかりを追い
長い目で育てていくという視点が薄くなってきているということからだそうだ。
最後の章で、内田さんが言っていた「ストックフレーズの乱れ打ち」はコワイ話だった。
気の利いた文章を書く子がさらさらと書き上げた文章ほど、致命的に定型的。
マニアな雑誌の投稿欄、オタクのTwitterみたいに、
誰が書いても同じニオイなんだろうなあ。

『続々 自閉っ子、こういう風にできてます!自立のための環境づくり』
:岩永竜一郎・ニキリンコ・藤家寛子
ニキさんの本を読んでいると、
人の身体も感覚も程度問題なのだと思う。
多数決で決まっている世の中でどう上手く対応していくか、
それは障害のあるなしにかかわらず誰しも関係のあること。
誰もが自分の身体のことしかわからない。
感じ方見え方が他の人と同じである確証はない。
不便であることすら、自分の体験で比較をしなければ見えてこない。
感覚を分かりやすい比喩で言葉にすることのできるニキさんによって
専門家も気付いていなかった様々なヒントが見えてくる。
固有受容覚がちゃんと働かないと、自分という意識を持ちにくくなる、なんて
言われてみればそうか!と納得。
身体と頭とココロは繋がっていて、
その人の繋がり具合でそれぞれの個性が出来上がっている。
相手の反応が表面から見えにくい分、
自分の理屈・感覚を他者に押し付けてしまうことも多い。
自閉症スペクトラムの人だけでなく、
多かれ少なかれ日常の不具合は誰しも持っているもの。
想像力と気付きって難しいけど必要なこと。

『ダイオウイカは知らないでしょう』:西加奈子・せきしろ(15.02)
ananで連載されていた、短歌に挑戦する企画、なのだと。
手に取ってぱらっと見たときの期待感が高すぎて、
それほど爆笑な感じでもなかったのは
まあ自分のせいですけど。
今まで読んだ穂村さんの著作の中で選ばれる短歌って、
素人目にもやはり研ぎ澄まされてるんだなあと思う。
二人(とゲスト)の作る短歌を見ていて、
文字をまず合わせることって、意外に大事なんだと思ったなー。
同じ人の歌を続けて読んでいると、
ちゃんとその人にしか書けないものがあるのが見えて面白かった。

『片づけの解剖図巻 心地よい住まいをつくりだす仕組み』:鈴木信弘(13.12)
家を作るときのヒントが詰まった本。
夢みたいなイメージだけで終わらず、
実際に住んでみた場合のシミュレーションを踏まえた提案。
私は家を作る予定はまったくないけど、
土間・下屋のある家は使いやすそうだなー。
とりあえずテーブルの上に置きっぱなしになってるものを、
自分の座る場所の隣に移動する、というのはやってみました(笑)
シンプルで味わいのあるイラストとコメントがツボ。

『たましいのふたりごと』:川上未映子・穂村弘(15.12)
川上未映子さんの本は読んだことがないけれど、
コダワリ方とか潔癖な雰囲気とか思い込み方とか読んでいると
こういう人だから小説を書いたりできるんだろうなと思う。
本のために1日で語り下ろしたような感じなので
一つ一つにもう少し分量があってもいいような気がしながら読んだ。
「牛丼を食べるたびにおいしすぎて不安になる」という穂村さんの感性は
やはり鋭すぎてレベルが違う。

『黄昏』:南伸坊・糸井重里(16.04)
文庫で読んだ。初出は2009年とか。
あまり二人が一緒にいる印象がなかったけれど
年が一つ違いだったり仕事をいろいろやってきたりしているんだな。
二人の面白いと思うところ、しつこくいじるところに微妙な違いがある。
伸坊さんがあちこちで「本人」になってるところがオカシイ。
天狗の活躍っぷりと奥様のプロ意識に笑う。
おじさん同士のバカな話って好きだ。

『まちの本屋 知を編み、血を継ぎ、地を耕す』:田口幹人(15.11)
盛岡にある、さわや書店フェザン店の店長による本。
中堅規模の本屋にできること、あるべき姿。
経営との両立を図りながら、
地域と繋がり本屋を超えて場を作っていく醍醐味。
本屋の棚から発されるメッセージ、個性がある。
本の付録のロボットを代わりに組み立ててあげるエピソードは
しみじみと感動的だった。
本は決め打ちで読めば済むものでも、似たような本ばかり読めばいいものではなく
思いがけない発見があるから面白いもの。
本屋や図書館に紛れ込んで物色する楽しさこそ、
なににも代えがたいと思う。

『11歳からの正しく怖がるインターネット 大人もネットで失敗しなくなる本』
:小木曽健(17.02)
ネットはあくまでも道具。
ネットが原因で良くないことが引き起こされるのではなく、
昔からある良くないことが、ネットを使って行われただけ。
自分でもスマホのことがよく分からないのに
子供に与えて不安になるってなんだろうか。
ネットという特別な枠の中で話をするのでなく
日常の中に置き換えて、
相手とどうコミュニケーションを取るか、その時ネットをどう使うか、
という視点から話が進むのでとても分かりやすい。
若い人からのメールの文章がものすごく短い、というのは
(そこが本題ではないけど)けっこう驚いた。

『鳥肌が』:穂村弘(16.07)
またまた穂村弘です。もったいないけど読んでしまった。
この本、いつものエッセイよりも、少し踏み込んだ感じがする。
おなじみの日常の中の暗黙のルールに右往左往する話のレベルが
常識と思うラインを少し逸脱しそうな、きわの部分に焦点を合わせてる。
読みながらゾクッとするような、
普通と見えていつの間にか違う世界に踏み込んでいる恐怖。
「そっくりさん」の話はかなり怖かったー。
挿絵の、気持ちがさわさわするようなタッチ。
つるつるして冷たさのある紙質も、内容を補完するようで。
1本と見せかけて、細い糸がたばねられていた栞も
読んでる途中に気付いてドキッとした。
「私の人生を四文字で表すならびくびくだ」の記述に爆笑する。
タイトルとしては、連載時の「鳥肌と涙目」の方が好きかも。
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テーマ : 最近読んだ本 - ジャンル : 本・雑誌

10:00  |  蛸足図書室  |  トラックバック(0)  |  コメント(0)

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