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2017.08.01 (Tue)

本棚:『60年代ポップ少年』ほか

読んでいたのは4月ごろですが、
何も書かずにいたので、すでにいろいろおぼろげです。
そして書いてそのままにして、またえらい時間が経過しています。

アタマや気持ちがぐるぐる回転するような、刺激的な本が続きました。

『ぐっとくる題名 増補版』:ブルボン小林(14.10)
ブルボン名義の本は初めて読むかも。
ネタが主体の本かと思ったら、ちゃんと実用的な話でした。
読んでみるとなるほどーと思うことがいっぱい。
この「なるほど」と思わせるために、
どんな視点を挙げていくか、例として出す本や映画や楽曲はどれにするか、
そこの選択が難しいんだろうなあ。
硬軟とりまぜた広い知識・見識がないと説得できない。

『オタク・イン・USA 愛と誤解のAnime輸入史』:パトリック・マシアス著、町山智弘訳(13.07)
面白かったです。
英語名のなんちゃって作者名かと思ったら、本気のアメリカ人でした。
アメリカオタクの黎明期から現在までが、あらゆる項目について書かれてる。
一つ一つの章は短いながら、みっちりと濃い未知の世界。
手ごろな厚さの文庫本、しかもオタクなネタと思って甘く見ていたら
あまりに濃すぎて読み進むのに時間がかかる!
日本のオタク黎明期でさえ、
情報を探し仲間を探し深くかかわっていくのは大変だったのに、
まったく言葉の違う異国で、中途半端なまがい物などに紛れながら、
日本にあるホンモノへ向かっていく情熱の凄さといったら。
まあその延長線上に、
私がドイツサッカーを追っていたことなんかも同じものだとを思えば
そんなに他人事でもないし、
好きになってしまったらやってやれないことはないのだと思う。
それにしても、オリジナルの改編(合体やら追加やら)・クオリティの低いグッズ・
放送時間のいい加減さなどなどに阻まれながらも
惹かれていく、のめり込んでいく、その力はものすごい。
そしてネットで簡単に情報が手に入るようになった今、オタクであることとは
まったく次元が違うのは、日本もアメリカもかわらない。
広いジャンルを網羅して、なお語りすぎず、
単なる情報に終わらず一通りの状況をリアルに知っている人によって書かれていて、
コンパクトにアメリカのオタク状況を知るには格好の本。

『ぼくらの身体修行論』:内田樹・平尾剛(15.03)
付箋を貼りまくって何度も読みたくなるような本。
こういうの、スポーツで子供をどにかしようと思っている親御さんに、
今!読んでほしいと思う。

合気道の内田さんと、ラグビー日本代表だった平尾さんとの体をめぐる話。
2007年の対談と2014年の対談。
19年間のラグビー生活の中で得た経験を言葉に落としていくことは、
その人にしかできないし、誰のものでもない貴重なもの。
第一線でスポーツをやっていた人が、教育に向きあって、
自分の経験を言語化していく勉強をしていくことって
客観的で誰にでもわかるような形で教えてくれるというのは
とても意義のあることだと思う。
感覚でしか分かっていない、感覚としてもまだちゃんと感じていない、
個人の経験で済まされてしまうようなものの中に
誰にでも共通している、数値化できないけれどとても大切なものがたくさんある。
今のスポーツ教育の中では置き去りにされているものの中に、
その人が豊かに生活していく、
生き延びていくために必要な知恵が山のようにある。

ミラーニューロン、
見るより先に感じる先取りの感覚、
複数の身体的コミュニケーション、
勝負はあくまでも方便であって目的ではない、
「練習」は後追い・危険予測をした時点で後手、
数字でスポーツを見ることは体に対する冒とく、
経験は絶対時間ではなくむしろ年数、
練習強度をあげても結果は出ず、
むしろ身体を休ませ脳でイメージを反芻していることで染みていく。
「気持ちの良い状態に持って行くこと」が武道ではとても大切なのに、
今のスポーツ教育は苦痛に対する我慢の報酬としての結果(数字)を重視しすぎている。
今のスポーツ教育は、戦中の強兵を手っ取り早く作るための策の延長。
筋トレでつけた筋肉は、ジムのマシンを動かすためにだけ特化した筋肉で
実践には使えない。
ブルース・リーの肉体はケンカで作られたもの。
エヴィデンスがなくても、トップアスリートの経験が言語化され、
再現性があれば科学になる。
体罰と根性論で過ごした選手が指導者になった時、
自分を否定するような教育が選べない。
スポーツで結果(数字)を出して入学してきた生徒が
継続してスポーツをやることが減っている。
期間を区切らない結果を求めない、
自分の中の成長を喜ぶタイプのスポーツに生徒が集まっている。
etc。

身体に対する信頼や愛情、興味などに裏打ちされた二人のやりとりは
とても健全で気持ちがいいもの。
子供をとりまく今のスポーツの状況の歪んだ姿、怠慢な構図に悲しくなる。

ここから長い愚痴になるけれど、
職場の同僚の話を聞いてうんざりしているので、
ホントこーゆーの読めよ!と思う。
イヤミにしかならないので勧めないけど。
強いこと、勝つこと、
強いチームに入ること、そのために引越しすること、
その中でまたAチームだのBチームだの選抜されること
もうそういう、価値観が一つしかない場所で
「子供がやりたいから」という理由を言い訳にして(人に押し付けて)、
目先のことしか考えない、隣のコより良ければOK、
自分以下の子は(そうは言わなくても)見下してる、
そんな世界にいることがとてもキモチワルイ。
身体を動かすってそれだけで快楽で、
昨日できなかったことが今日できる、思ったように体が使えるようになる、
頭で考えたこと、工夫したことがちゃんとつながる、
それだけで無上の喜びで、
でもそれってその当人にしかわからないし、うまく説明できるものでもない。
それは体育会系だろうが文科系だろうが違いはない。
でもそういう「違う自分になる喜び」を知らない人は、
分かりやすい数字に頼って判断することしかできないんだよね。
その判断は相対的な評価だから、
上に行く人がいれば下に行く人も当然生まれてしまう。
そこに思い上がりや卑屈さが生まれないわけはないよね。
そういう親、指導者、チームメイト、チームメイトの親に囲まれて、
数で言えばたくさんの人と交流しているようでも、
中身が同じ人の群れにいるのでは
自ら気付き、成長するきっかけをつかむのって難しいような気がする。
「いい大学」「いい会社」「そこでの出世」という古い価値観を
単にスポーツという場所に移してるだけで、
スポーツやってるから爽やかで健康で人間的にも優れてて、って
イメージとの乖離がはなはだしすぎて気持ちが悪い。

『部屋にて』:石田千(07.06)
気持ちを穏やかにしたいときには石田さんの本を読む。
絶妙なひらがなの使い方、句読点の置き方、言葉の選び方、
どれも独特で、今の時代に書いているとは思えない雰囲気をもっている。
この話は日常雑記と思ったけど、艶めいた印象を感じる文章も入っていて
小説風な、切り取ったような話を並べて行ったようなものなのかな?とも感じた。
これまで読んでいた本でも、静かな文章の中で、
けっこう外を出歩き、ふらふらと飲んで歩き、いろいろな人と会っていたりするのが、
少し意外に感じつつ楽しんで読んでたけれど、
この本はもう少し自分に入り込んだような、
外よりも内を向いて、より小さな場所で動いているような感じがしたなー。
随筆であっても小説風のものであっても、
石田さん本人の輪郭がはっきりとしないところはさすがの文章。

『60年代ポップ少年』:亀和田武16.10)
亀和田さんという人を私はよく知らないけれど、
パラパラ見て文章が良いなと読んでみた。
ビートルズとも五輪とも無関係だった少年が夢中になっていたもの。
プレスリーとビートルズの狭間で生まれた甘い和製ポップス、
ジャズ喫茶、SFファンとの会合、サブカルチャー、学生運動、その中での恋。
一般的な60年代モノではこぼれ落ちてしまうような、
でも確かに存在したリアルな記録。
後半、学生運動の話がメインになるが、
セクト名やヘルメットの色は山ほど出ても、
観念で凝り固まっているようでもなく、
他に面白いことがないから暴れる、
デモに行きバリケードで寝泊まりし郵便局を駆け抜ける。
反対する理由と、目の前の対立する相手が直接つながっていない気がするが
ただ暴れたくて集まっていた若者も相当数いたのだろう。
ノスタルジーに陥らず、記憶の捏造もせず、
ちゃんとかつてあった事実を描く。
色あせずにそのまま描かれる60年代のリアル。面白かった!
表紙に描かれた江口寿史のイラストが、
激しい活動に飛び込んでいく少女の姿そのまんまで美しいです。
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テーマ : 最近読んだ本 - ジャンル : 本・雑誌

10:45  |  蛸足図書室  |  トラックバック(0)  |  コメント(2)

Comment

のもんさん。いろんなジャンルの本を選んで読んでいるのね。
私はひとつ気に入るとその作家ばかり追いかけるのは
他のジャンルの本に気がいく余裕がないってことかも。


「違う自分になる喜び」という言葉に ズキンときました。
今の状況から抜き出るヒントをもらった気がする。

っで さっそく今日は実行することができました~。
神保町の岩波ホールに映画を見に行って
帰りに立ち寄った本屋さんで「小津安二郎日記」という
本を見つけたの。
もちろん 即購入したのは 来生さんのクリコンでの差し入れのつもり。
持ってるかな~? 
自分の為に本を選んでいると 気が急くんだわ。。。


空 |  2017.08.11(金) 21:11 | URL |  【編集】

空さん

こんな頭の中を垂れ流したような文章を
読んでくれてありがとうございます。
ジャンルは広いようでいて、
興味のあることはだいたい決まってるんですよね。
気に入るとそればかり、というのは私も同じですよ。
連続してないだけで。

いつもと違うことをやってみるって、
楽しいですよね。
気付かなかったものが見えたりして。

来生さんは本はどうやって選んでるんだろう。
映画はツタヤだけど。
本屋には新しいものしかないから、
図書館とか古本屋に行ったりするんですかね。
のもん |  2017.08.16(水) 11:32 | URL |  【編集】

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